活動趣旨

 今日、かつてない国際情勢の緊迫化や地球温暖化をはじめとする環境問題への関心の高まりなどから、世界は大きな変革の時期を迎えております。世界各国間の距離が縮まった現代では、開発途上国の政治的・経済的発展をなくしては先進国の発展は望めず、また人道的・道徳的見地からも開発途上国への積極的な援助が求められております。このような背景の中、日本が国際社会にさらなる貢献をしていくためには、先進国のみならず開発途上国との政治・経済・文化および科学といった多彩な分野における国際交流を通して、多様な価値観をもつ人材を産みだすことが重要であると考えます。

 日本や欧米諸国は高度に発達した医療体制を有し、相互の交流がより緊密になり、さらなる発展を遂げる一方で、これらの医療先進国が過去に経験した医療問題を未解決のまま抱える医療開発途上国も数多く存在します。逆に医療先進国では輸入感染症に悩まされることも多く、我が国を含む先進諸国は、こうした医療開発途上国との相互理解を深め、積極的に援助を行うことが求められております。このような見地から、将来の日本の医学・医療を担う医学生が、多様な国際的要望に応えることのできる幅広い視野と積極的な行動力を身につけ、国際社会に通用するコミュニケーション能力を養うことは大変有意義であると考えます。

 また、近年日本における医学・医療は、その発展に伴い専門化、細分化が進む傾向にありますが、その弊害も数多く指摘されており、我々は生命の倫理について再考せざるを得ない場合もしばしばあります。こうした現状からも、日本と社会・医療事情の大きく異なる開発途上国での医療の体験は、医の本質を再認識し、医師としての新鮮な感覚と深い洞察力を体得する契機として意義深いと考えます。

 以上の趣旨に基づき、慶應義塾大学医学部国際医学研究会は過去40回にわたり中南米諸国を活動の拠点とした世界各国で、現地における医療協力、様々な医療調査、日系人移住地における集団健診、現地の医学生との交流など、数々の成果を収めて参りました。